にいがた市民大学2021認知症とともに〜安心して暮らせる社会づくり ~Vol.10 見守りのまちづくり

 認知症になっても安心して外出できるまちづくりとは―。地域で暮らす認知症の人を見守る仕組みづくりに取り組む「大牟田市認知症ライフサポート研究会」(福岡県)代表の梅﨑優貴さんが講演。認知症の高齢者を探す模擬訓練を紹介し、取り組みから見えてきた成果や課題を語った。

 

大牟田市認知症ライフサポート研究会代表

小規模多機能ホームたかとりの家、いまやまの家 ホーム長

梅﨑優貴さん


うめざき・ゆうき 1983年、福岡県大牟田市出身。専門学校を経て社会医療法人親仁会に勤務(現在社会福祉法人あらぐさ会に出向中)。2014年から大牟田市小規模多機能型居宅介護施設連絡会世話人。20年から大牟田市認知症ライフサポート研究会代表。21年から理化学研究所客員研究員。介護福祉士。








 






 

誰でも出掛けられる地域に

 大牟田市では認知症になっても地域で暮らせるまちづくりを目指し、2002年度から介護事業所でつくる研究会と行政が共に事業を展開。市民の多くが認知症の人を支える意識や仕組みが必要だと考えていることを踏まえ、人材育成や早期発見のための相談、健診などさまざまな事業に取り組んできた。

 そのうちの一つが「ほっと・安心ネットワーク模擬訓練」。認知症でも安心して外出できるよう、道に迷う高齢者への声掛けや見守りを行うとともに、必要な時には保護できる仕組みづくりの取り組みだ。



■迅速な保護に成果

 行方不明事案が起きると、警察から市役所に連絡が行き、市内各校区のネットワークや周辺の市町のほか、市内関係団体や介護医療従事者のボランティアらに情報が発信されて捜索が始まる。模擬訓練はその仕組みの効果や課題を確認するために実施。行方不明者が出た想定で年1回、情報伝達と各校区での捜索・声掛けを行っている。

 こうした訓練を始めた背景には高齢者の行方不明による死亡事故が後を絶たず「なんとかしなくては」と住民意識が高まったこともある。04年に1校区で始まったが、10年には22の全校区に広がった。13年には市内で2千人以上が訓練に参加。子どもたちもいる。17年ごろからは当事者の参加も増えてきている。

 訓練の成果は行方不明者の情報発信前に住民が発見するケースが増えたことに表れている。日頃からの地域の見守りや声掛けができるようになってきたのではないか。認知症になっても住み慣れた自宅や地域で暮らせるようになった。 


積極的に訓練に参加する「子ども民生委員」(大牟田市認知症ライフサポート研究会提供)



■啓発で見えた課題

 ただ一方で課題も出てきた。中心的に活動していた住民が認知症になると外出しなくなったり、地域行事に必ず参加していた人が認知症になって関わりを拒否するようになったり。一緒に活動してきた住民は認知症になってもまちづくりに関わってくれると思っていたのに、いざ認知症になると、本人たちはそうしたくなくなってしまう。

 こうした事態が活動を振り返るきっかけとなった。啓発するあまり「認知症=支えられる側」という意識を無意識に植え付けてきてしまったのではないか。支援者目線で発信をしていたのではないか。そもそも、訓練は何のため、誰のためにやるのか。認知症だけで良いのか。いまだに課題と向き合い、もがいている。

 まずは認知症啓発の仕方を見直す必要があると思っている。啓発講座に本人の声や思いを盛り込む、対話を重ねて認知症を自分ごととして捉えてもらうなどだ。当事者には、一人ひとりに合わせた関わり方、個別支援を目指したい。

 認知症と聞いて多くの人が困っている姿を想像するのではないか。だが、実際は働いている人も、社会の役に立っている人もたくさんいる。その人自身を見詰めた上で、その中に少し認知症という部分があるという見方ができるようになると、個人も地域も社会も変わってくるのではないだろうか。認知症でイメージする姿が「目的をもって生き生きとしている姿」に切り替わっていくように啓発していきたい。



「もの忘れ専門医」が当事者役を務めた訓練の様子(大牟田市認知症ライフサポート研究会提供)