認知症とともにinメディアシップ

 認知症の正しい知識を学び、理解を深める「認知症とともにinメディアシップ」が9月26日、新潟市中央区の新潟日報メディアシップなどで開かれました。認知症介護研究・研修東京センター研究部長の永田久美子さん=三条市出身=のオンライン講演や県内の医療、福祉、介護の専門職らによるパネルトークなどが行われました。ライブ配信を含め約140人が参加、新型ウイルス禍の中、当事者と家族が安心して暮らせる地域の在り方を考えました。(文中敬称略)

 

認知症介護研究・研修東京センター

研究部

永田 久美子部長


 ながた・くみこ 1960年、三条市出身。千葉大学大学院修了。東京都老人総合研究所を経て2000年から現所属。13年から現職。厚生労働省、経済産業省、国土交通省の研究事業委員、NHK「認知症とともに生きるまち大賞」選考委員長などを務める。

 

■基調講演

地域舞台に力を発揮

希望持ち自分らしく


 認知症になっても、自分らしく、よい人生を送ることが実現可能な時代となっています。本日は地域の中でよりよく生きるヒントを探ります。

 政府は2019年、国家戦略である「認知症施策推進大綱」をまとめました。これまでの「認知症の人を支援する」という一方通行的な考え方ではなく、「認知症の人もそうでない人も希望を持ち共に生きる地域社会」の実現を目指します。あらゆる分野の人が力を合わせた地域づくりが始まっており、現在はこの新しい考え方への過渡期です。

 実際、認知症の人は予想以上に増えており、人ごとではありません。「なりたくない」ではなく、「自分がなっても地域の中で暮らしていく」というイメージを持つことが大切です。認知症の人は「私たちの一歩先行く人」であり、認知症の体験者として暮らしやすい地域をつくる手掛かりを教えてくれます。

 家や施設に閉じこもって外出しないと、誰でも非常にストレスになりますが、認知症がある場合、状態悪化に直結します。新型ウイルス禍でもベランダで外気に触れるだけでも五感が刺激されます。感染に気を付けながら地域に赴き、季節を全身で感じると生命力が高まります。

 刺激が大切な一方、声掛け自体が本人のストレスになる場合もあります。よかれと思っても本人は「口出しされた」と感じてしまい、何げない一言が自信を傷つけます。よりよく暮らすためにできることは多くあります。本人や家族だけが頑張るのではなく、地域の多様な人々がつながり合うと想像以上の力が生まれます。

 認知症になっても力を発揮し、自分らしい暮らしを継続する。よりよい人生行路をたどれば、家族や住民、専門職の負担も減る。これが新しい考え方です。本人が支えられる一方でなく、地域の一員として活躍し、希望を抱きながら楽しく過ごす人が全国で増加しています。新型ウイルス感染禍の今、新しいつながりや楽しみをつくろうとしている地域もあります。 

 例えば、本人や住民らが農作業を行う湯沢町の「アクション農園倶楽部」では、感染症対策を講じ、活動を続けています。また、東京都町田市では、本人らが竹林の整備や収穫したタケノコ販売で稼いでいます。「建物に集まるのが無理なら、広々とした場所で働こう」という逆転の発想です。

 もはや認知症を隠す時代ではありません。「自分がなっても一緒に楽しく」と言い合える仲間を、自分の周りに増やしていきましょう。

 

■パネルトーク

感染禍でも助け合い

理解深め優しい社会


パネリスト

白根緑ケ丘病院院長 佐野 英孝さん

塩沢デイサービスセンターゆきつばき施設長 岩田 拓さん

認知症の人と家族の会新潟県支部 徳善 里子さん

コーディネーター

新潟日報社「にいがた元気プラス」プロジェクトリーダー 山本 献


 山本 新型ウイルス禍の近況を含め、まずは自己紹介をお願いします。


運動や禁煙、減酒

認知症予防に効果

    佐野 英孝さん

佐野 認知症疾患医療センターで日々、患者さんと接しています。新型ウイルスの影響ですが、受診を控える方が増えています。外出が難しい施設の入所者には、家族や施設の職員が外来を訪れ、様子を聞いた上、薬を出しています。

 岩田 南魚沼市塩沢地区でデイサービスセンターの施設長を務めています。最近では地域の方から「必要な医療、介護が受けられない」との相談を受けています。みとりの段階なのに、面会もままなりません。

 徳善 「地域の茶の間」や家族のつどいなどを行っています。96歳になる母は認知症の「まだら症状」です。すでにみとりを終えましたが、認知症の義母を介護した経験があります。当時中学生だった息子が3回、お年玉をもらったことがあったそうです。まだ認知症にどう対応してよいのか手探りの時代でした。

 山本 新型ウイルスの影響は深刻です。医療、福祉の現場、地域の居場所でご苦労も多いと思います。

事業所同士が連携

ネットワーク必要

     岩田 拓さん

 岩田 胆石で入院した地元の当事者が退院後、群馬県の施設に移ったケースがありました。県境をまたぐため面会にも行けない。結局、その方は新潟に戻ることができた。そのやりとりが大変でした。

 また、知人のグループホームで感染者が出た際、入所者全員を隔離しました。これは「利用者に寄り添ったサービス」とは真逆の対応になってしまう。小規模な事業所同士が助け合い、マスクなどの消耗品を支援するなどネットワーク化の必要性を感じました。

 佐野 当院では275床のベッドのうち認知症の方が116人入院しています。誤嚥性(ごえんせい)肺炎や骨折など合併症を発症する方も多いですが、発熱があると他の医療機関を受診することが難しい。必要な医療が受けられない状況が目立っています。一方でリモート面会など、認知症の方の症状の変化を家族に小まめに伝えています。

ワクチン情報共有

団結の心芽生える

    徳善 里子さん

 徳善 地域の茶の間は一時、休みましたが昨年10月、再開しました。ワクチン注射の情報を参加者が共有するなど、「私も助けてあげられる」という団結の気持ちが、芽生えたようです。

 山本 「認知症施策推進大綱」では、進行を遅らすという意味で予防がうたわれています。

 佐野 糖尿病など病気の予防が大事です。血液検査に加え、運動や禁煙、お酒の量を減らすことも認知症の予防につながります。趣味や生きがいを持つことも大切です。

 それでも「忘れっぽくなった」と感じたら、かかりつけ医に相談してください。最近では「オレンジドクター」といって、精神科以外の先生でも認知症に対応してくれます。初期集中支援チームでも、早期受診を促すよう心掛けています。

 徳善 認知機能が低下しても最低限の手助けをすれば、地域の茶の間に参加できます。「失敗しても大丈夫な場所なんだ」と感じてほしい。

 岩田 周囲が認知症を理解し、配慮することで、ひとり歩きや暴力といった症状は治まります。どんなことに困っているのか、目を向けてください。

 山本 新型ウイルス終息を見据え、住みよい地域を実現するためには何が必要ですか。

 徳善 一人一人の介護の方法は違い、正解はありません。それでも介護者の話に耳を傾け、「頑張っているね」と声を掛けるだけで、暮らしやすい地域になります。

 岩田 認知症に限らず、困った人がいれば声を掛ける。そうすれば、互いに支え合う優しい社会になると思います。

 佐野 認知症になっても隠さないでほしい。オープンにすれば、事故に巻き込まれたり行方不明になったりすることを防ぐことができます。

 

■サポーター養成講座

正しい接し方学ぶ

 認知症を正しく理解し、本人や家族を見守る認知症サポーターの養成講座には、約40人が参加しました。当事者への接し方などについて、中央区キャラバン・メイト連絡会の小野寺よしこさん、坂田のぞみさんらが解説しました。

 小野寺さんは、認知症だった祖母のため、病院の受診日などを記したメモを毎日、残していったエピソードを紹介。「後から見ると、私と交わした会話がメモに書かれていた。『家族に迷惑を掛けたくない』という祖母の気持ちが伝わった」と振り返りました。

 その上で「本人は怒られたことは覚えていないが、悲しみや怒りの感情は残る。本人の気持ちに目を向けてほしい」と呼び掛けました。

 また、坂田さんは、本人への接し方について「驚かせない」「急がせない」「自尊心を傷つけない」の三つのないを強調した上、「まずは見守る」「余裕をもって対応する」など七つのポイントについて説明しました。

 

■参加者の声

サポーター養成講座

 非常に具体的で分かりやすかったです。改めて一人で悩まないで周りに声を出して相談したり、包括支援に寄ったりして、支える側の気分転換の方法も必要だと感じました。 女性(73)

 

講演会・パネルトーク

 認知症についてもっとオープンにする必要があると感じました。一人一人の認知症に対する認識、地域での認識を変える必要があると思います。特に介護関係者への啓蒙が重要だと思います。男性(55)

 「見方を変える」「友だちと一緒に考えてもらう」。今日のお話で忘れていたことを思い返すことができ、とても良かったです。「人の輪」をつくろう。楽しいことを探そう。とても良い話を聞くことができました。 女性(78)